3/04, 2006

■3月1日ライブレポート(試聴あり!)

Filed under: Live Reports — webmaster @ 10:30 am

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                   ―試聴出来ます!―
                    『遠い日の私』icon
                    『Calm〜凪〜』icon

■去る3月1日に赤坂グラフィティで行われたライブの模様をレポートします。

朝から冷たい雨が降っていた赤坂の夜。それでも会場は終始暖かい雰囲気に包まれていました。
この日のマリ子さんの出番は4番目。トリということで少し緊張していたようですが、歌い始めたとたんに何かが降りて来たかのようにその様子は一変しました。
まるで雨だれのようにしっとりと爪弾かれていくギターの音にあわせて歌われたのは『遠い日の私』。
これはソロアルバム『end of a rainbow』に収められていた曲ですが、ファンの方からのリクエストが最も多かった曲だとか。アルバムでは切れの良いアレンジでテンポ良く、躍動感いっぱいに歌われていますが、この日はスローテンポでしっとりと。積み重ねてきた月日が、まぶしく輝く青春の日々をより一層味わい深い想い出へと磨き上げていくものなのだと、彼女の歌を聴いているとしみじみ思わずにはいられません。
ずっとリクエストをいただきながらも、なかなか歌うタイミングが掴めなかったというマリ子さんですが、まさに機は熟したという感じなのではないでしょうか。

そうして1曲目からぐっとお客様の心を掴んだところでサポートの熊谷大輔さん登場。
「ういういしい気持ちを持っているのだけれども素直になれない恋の話です」という紹介とともにゆったりとしたギターのストロークから始まったのは、このところのライブではおなじみの曲『tea leaf』。
……どうしても言えない。誤れない。嫌いなんて、あんな言葉はあのテーブルに置いてきて……
これぞ女心の妙味。本当の気持ちと裏腹な言葉。好きなのに嫌いだなんて、誤りたいのに誤れないなんて。まるでポットの中で広がっていく紅茶の葉っぱのように、次々と浮かんでは沈んでいく言葉の数々。
沈黙の中で揺れる女心を紅茶の葉っぱに映し出した、マリ子さんらしい一曲。
こんな状況に覚えのある男性の皆さん、どうか目に見えることだけでなく、その奥にある彼女の本当の気持ちも汲み取ってあげてくださいね。そうじゃないと、どんどん色が濃くなって、紅茶が苦くなりますよ。

そんな女性の見えざる心を、一人の少女の姿を通して描いたのが3曲目『Sweets』。
かきむしるようなストロークで歌われるこの曲は、思春期の少女特有の苦くて、少し毒があって、そして甘い。そんな感情を鋭く切り開いて見せたような一曲。
……お気に入りのボタンをバッグに縫い付けた。きつく……
この一節が一人の少女の心情をいかにリアルに表しているか。こういう表現を出来るマリ子さんの歌からは、歌詞を越えた、一つの物語さえ感じられます。
最後、うっかり蛇イチゴを踏んでしまった少女が、思わずその足もとをさらにぐっと強く踏んでしまうように、ギターが激しくかき鳴らされて、突然歌は終わります。

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ヒリヒリと心が痛む不思議な余韻の残る中、突然世界は一変し、このところのライブではお馴染みとなったカバー曲『Agua de beber 〜おいしい水〜』に。
この曲はボサノバを代表する作曲家アントニオ・カロス・ジョビンの作品で、アストラッド・ジルベルトやセルジオメンデスなどがヒットさせたものですが、マリ子さんが歌うと全く別の世界が現れるから不思議です。
曲の後半熊谷さんのヴォイスパーカッションとマリ子さんのウィスパーなささやき声との掛け合いはこれまでになかったもの。マリ子さんの歌世界の幅広さに思わず敬服です。

さらに、このところライブのたびに新曲を披露しているマリ子さんですが、この日も新たな曲が生まれたということで、披露してくれたのが『Calm〜凪〜』。
実はこの曲、もうずいぶん昔に彼女のお兄さん(シタールや民族楽器で高名な若林忠宏さん)から、「こんな感じはどう?」と言われて頂いたイメージを、ずっと温めていたものだそうです。
「ずいぶん時間がかかったけど、この間ふっとかたちになったの」というマリ子さんいわく「傷心を抱えて旅をしながら、何かに気づいていく女の子の歌です」とか。
旅先に着いた夜明けの駅で、朝もやの中にふと垣間見えた愛する人の幻。賑わう朝市の人ごみを掻き分けながら、異邦人である自分の姿を姉弟達を支えるけなげな少女に見立て、何を値切ろうかと算段してみる。そのまま足早にタバコの煙でかすむ雑踏を通り過ぎて、愛する人の姿を追い求めて思わず口にした愛する人の名前。「行かないで」……
ゆっくりと繰り出されるアルペジオにあわせて次々移ろうコードの上を、ゆっくりと想い出をたどるように唄われる歌からは、まるで映画のワンシーンのように、凪いだ川べりの情景が鮮やかに見えてきます。
ちなみに曲中に出てくる“リムカ”とはインドの清涼飲料水、“パーン”とはタバコのことだそうです。

次の曲は「何回も恋を重ね、おとなの恋なんだけれど、だんだん自分のことは自分でできるようになっちゃって、何にも言わなくなってしまった、そういう女の人の歌です」、そんなMCで紹介された『Birth』。
テンポの良いアルペジオで恋から愛へと変わっていく女性の、強く、そして包むような優しい想いをのびのびと歌い上げていく一曲。途中、予測もできないコード展開に思わず唖然?としてしまう、実にマリ子さんらしい不思議なメロディ。
「なぜだかサビからできちゃって」と言っていたマリ子さん。こんなメロディから歌ができてしまう、マリ子さんの才能の非凡さが伺える一曲です。

そして最後はライブでも評判の新曲『Sunrise』。
テンポの良いストロークで唄われる歌ですが、今回は熊谷さんのコーラス付きで、より一層軽やかに。
「この歌を唄うと、色んな人の顔が浮かぶ」というマリ子さん。ただ明るいだけじゃなく、どこかに翳りを帯びながらも、それでも朝陽に向かって進んでいく。そんな女性の凛とした姿が、この歌を聴いているうちに見えてきます。
……今日が続いていつかになる……
軽快なグルーヴで伸びやかに歌い上げたマリ子さんの熱唱で、会場の熱気は高まるばかり。

ということで止まぬ拍手でアンコールへと突入。
全く考えていなかったというマリ子さんは、ギターを持ったり置いたり、また持ってみたり。どうしようかとしばらく悩んでいましたが、「ままよ」とばかりにギターを置くと、「どうしていいかわからないので、インド民謡を唄います」ということでインドの恋歌『オキガリヤルバイ』をアカペラで。
この曲は、牛追いの牧人に、愛しい人へ届けて欲しいとその想いを託す少女の歌だそうで、途中のサビで声を張り上げる部分の長さでその想いの丈を表すのだとか。とはいえ、その歌い方や声のトーンは独特で、なかなかそう簡単にできるものではありません。さすがお兄様仕込みの比類無き歌力。
この、マリ子さんにしかできない歌の世界を、期せずして体験できたお客様は、本当にラッキーだったと思います。後半、熊谷さんの十八番とも言える民謡パーカッションも聴き所。
これが何の打ち合わせもなく歌われるのだから、本当にこの二人はスゴイです。

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以上アンコール含めて8曲。
わずか30分でしたが、実に密度の濃い時間でした。

セットリストは以下の通りです。

3月1日@赤坂グラフィティ
若林マリ子 with 熊谷太輔(パーカッション)

1.遠い日の私
2.tea leaf
3.Sweets
4.おいしい水(cover)
5.calm〜凪〜
6.Birth
7.Sunrise

アンコール
8.オキガリヤルバイ(インド民謡)

次回ライブは4月4日。場所は同じ赤坂グラフィティです。
ぜひいらしてくださいね!

(photo & reported by rainbow/Live sound mixd by tanz)

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